エゴグラムとは
エゴグラム とは、エリック・バーン (Eric Berne) の交流分析における自我状態をもとに、弟子であるジョン・M・デュセイ (John M. Dusay) が考案した心理テストで、質問紙法に分類されます。
バーンは、交流分析の理論をベースに人の行動(言語・声音・表情・ジェスチャー・姿勢・行動)をParent(親)、Adult(大人)、 Child(子)の「3つの自我状態」に分類しました。
そして弟子のデュセイは、P の部分を、厳しい親である CP(Critical Parent)と優しい親である NP(Nurturing Parent)に、C の部分を、自由奔放な子供である FC(Free Child)と従順な子供である AC(Adapted Child)に分類し、これら5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さをグラフ化し視覚的に把握できるようにしました。
CP:父親的な役割を担う批判的な親の自我状態
NP;母親的な役割を担う養育的な親の自我状態
A ;事実に基づき、物事を客観的かつ論理的に理解し、判断しようとする自我状態
FC;もって生まれた自然な姿である自由な子どもの自我状態
AC;親の影響を受けた順応した子どもの自我状態
エゴグラムを正しく活用するためには、交流分析理論をある程度、理解することが必要です。
また、エゴグラムは正常~異常を判定するものではなく、あくまで自分の自我状態に気づき、自己分析するためのツールとなります。
数値が高いから「良い」ということではなく、得点が高い時にみられる長所と短所、得点が低い時にみられる長所と短所を統合的に理解することが重要となります。
東大式エゴグラム(TEG)
日本では1974年に質問紙法エゴグラムを発表して以来、10数種類のエゴグラムが開発され、各方面で活用されるようになりました。
現在、日本で「エゴグラム」といえば東大式エゴグラム(TEG)を指すのが一般的です。
TEGは、1984年に初版が刊行され、1993年には第二版が刊行され、長年TEGⅡが臨床現場で使われてきました。
その後、2006年に新版TEGⅡが刊行され、2019年12月にTEGⅢが発売されました。
当研究所ではいち早くTEGⅢを導入しています。
TEGⅡとTEGⅢの大きな違いは、質問項目の文章です。
TEGⅡでは、発刊が20年近く前(新版でも15年前)であり、現在の若者にはわかりにくい表現が使われていました。
実施法
TEGⅢは自己記入式の質問紙法です。
質問項目は全部で53項目あり、質問に対して「自分にあてはまる」の時は、「はい」に〇を、「自分にあてはまらない」の時には「いいえ」に〇をつけます。
なるべく「はい」か「いいえ」で答えるよう指示がありますが、どうしても決められないときには「どちらでもない」に〇をつけます。
回答する際には消しゴムは用いず、回答を訂正したいときには二本線を引きますきます。
また53項目全てに回答しなければなりません。
深く考えずに思いついたことをそのまま回答することが望ましく、実施時間は10分~15分程度のことが多いです。
対象年齢は特に規定されていませんが、質問を被検者自身が読んで理解できる年齢であることが望ましいでしょう。
複数回実施する場合には、3週間以上空けて実施することが望ましいとされています。
採点
採点は、用紙に書かれている「採点のしかた」に従うことで簡単にすることができます。
5つの尺度の点数を計算した後、プロフィール表に書き込みます。
プロフィール表には、5つの自我状態が棒グラフで表現されるため、各尺度の高低が一目で分かるようになっています。
また、TEGⅢには妥当性尺度(L)と疑問尺度(Q)が採用されており、被検者の受験態度に問題はなかったか、応答に対する信頼性があるかを調べることができます。
L尺度が3点以上の場合には信頼性が乏しいとされ、Q尺度が32点以上の場合には、判定を保留にすることが望ましいとされています。
解釈は、L尺度とQ尺度をチェックした後で行います。
そして、5つの尺度のそれぞれの高低を確認し、被検者の主となる性格特性を把握します。
次に、それぞれの尺度の関連を、統合的、総合的な観点から分析し、評価をします。
5つの尺度の高低の形から、パターン分類も行いますが、パターン分類は理解の参考程度に留め、自我状態の構造分析、機能分析を学習し、正しく読み取ることが必要です。
パターン分類については「新版TEG 3 マニュアル(東京大学医学部心療内科TEG研究会 編)」を参考にしてください。
特徴
TEGⅢの大きな特徴は、グラフ化され、結果が非常にわかりやすいことです。どの自我状態が高く、どの自我状態が低いのかも視覚的に理解できます。
そのため、被検者がどのような状態になりたいか(どの自我状態を高めたり低めたりしたいか)について本人も結果を見て意識しやすく、TEGⅢを定期的に実施することで自身の変化を見ることもできます。
また、TEGⅢは自己記入であるため、「自分で思っている自分」の状態が結果として表れます。
さらに親や友達、恋人、上司など周りの人に被検者について記入してもらうことで、「他者から見た自分」との比較を行うこともできます。
職場での自分、友達の前での自分、家での自分など、場面に応じて異なる自我状態になる方の場合には、それぞれの自分について評定してみるのもいいでしょう。
それぞれの差があまりに大きすぎる場合には、自身の中でバランスが失われ、負荷がかかっている可能性があります。
このようにTEGⅢは簡易に実施でき、かつ活用方法が幅広いため、医療現場だけでなく、教育、産業など幅広い領域で活用されています。
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