メンタライゼーションとは
メンタライゼーション(Mentalization)とは、フォナギー(Fonagy)とベイトマン(Bateman)が提唱した概念であり、『自分自身あるいは他者の行動をもとに、その人の精神状態に焦点を当てること』と定義しています。
つまり、自分や他者の行為などから、自分や他者のこころの状態を想像したり推測したりしながら、その人のこころについて理解していく力ともいえます。
メンタライゼーションという言葉だけでは、少し分かりづらいものですが、私たちは自然と生活の中で、メンタライゼーションの機能を働かせながら過ごしています。
例えば、ため息をついている友人を見た時に、あなたはどのようなことを感じるでしょうか。
友人の様子を見て“何か嫌なことでもあったのかな?”もしくは“体調が悪いのだろうか?”と考えたりすることもあるかもしれません。
このように、さまざまな可能性を想像し、相手のこころの状態を理解しようとすることをメンタライズするといいます。
あるいは、イライラしている自分に気付いた時に、“どうしてこんなにイライラするのだろうか?”と考え、自分のこころの状態を把握しようとすることもメンタライズしているといえます。
なぜメンタライゼーションが重要なのか
メンタライゼーションの機能が十分に保たれていると、相手の気持ちや考えについて想像し、多角的に推測しながら関われるようになり、自分の感情をコントロールでき、安定した人間関係や生活を過ごしていくことができます。
その反対に、メンタライゼーションの機能が十分に働いていないと、主観的なものの考え方に偏り、自分の感情のコンロールが難しくなってしまい、人間関係でトラブルを招いてしまうこともあります。
例えば、メンタライゼーションの機能が低下していると、恋人の些細な表情の変化や発言から、“さっき顔をしかめたから、きっと私に愛想をつかしてしまったに違いない”と思い込み、必要以上に物事を悲観的に捉えてしまい、相手との関係が悪くなってしまったりすることもあります。
メンタライゼーションの機能には個人差があり、その人が置かれている状況によっても変動します。
どんな人であっても、意識がぼんやりしている時や、親しい間柄(家族・恋人など)の相手に対しては、メンタライゼーションの機能が低下しやすくなります。
つまり、元々メンタライゼーションの能力を働かせにくい人がいたり、落ち着いた状況であれば十分に機能しているけれど、動揺した状態や特定の相手に対しては、機能しにくくなってしまったりすることもあるということです。
メンタライゼーションのモードについて
フォナギーとベイトマンは、メンタライゼーションの原初的なモードを3種類に分けて定義しています。この3つは発達的な側面や病理的な側面があり、これらのモードから、健康的なメンタライジング・モードへ変化させていくことが大事であるとしています。
・心的等価モード
乳児期に見られるモードで、現実と自身の空想との区別がなく、空想が現実に映し出されてしまうところが特徴です。
例えば、“みんな私のことを嫌っている”“周りの人が私のことを見ている”など、自分の不安がそのまま外の現実にも起こっているように感じてしまう状態です。
・プリテンド・モード
幼児期以降に見られるモードです。
このモードでは、現実と空想が完全に分離され、現実を無視して空想の中に浸っている状態です。
子どものごっこ遊びのように、その人にとっては空想によって良いものとして認識されてはいるけれど、実際の現実とは乖離しており、置かれている現実やその人の言動に、こころがついていけていないともいえます。
・目的論的モード
物理的な外の現実に支配されやすく、行動や実際的な結果に、空想が決定づけられてしまうモードです。
愛着の問題や外傷体験を抱えた人が陥りやすいモードであるともいわれており、相手を試すような言動を取ってしまうところが特徴です。
例えば“私のほしいものを買ってくれないのは、私のことが嫌いだからでしょう”と思い込んだり、“すぐに返事を返さないのは、私のことなんかどうでもよいと思っているからだ”と考えたりするなど、極端な思考に陥ってしまうモードといえます。
これらのモードは一直線上に進展していくものではなく、それぞれのモードを行き来しながら変動します。
これらのモードから、健康的なメンタライジング・モードへと移行していくことが好ましいとされています。
メンタライゼーションの理論に基づいた治療法
フォナギーとベイトマンは、メンタライゼーションの機能を向上させることによって、感情をコントロールする力を養い、安定した人間関係の構築を目指すことを目的として、メンタライゼーションに基づく治療(MBT:Mentalization-based treatment)を開発しました。
主に、境界性パーソナリティ症の治療法として確立しており、治療の中で、患者のこころの中で感じていることに寄り添いつつ、今起きている出来事と関連付けながら、患者の主観的な状態に焦点を当てて聴き、探索や内省を促していきます。
このようにして、“今、起きている出来事を通して、どうして私はそのように感じるのか?”について振り返っていくことで、自分のこころの状態を想像したり推測したりする機会が生まれ、メンタライゼーションの機能を育むことへと繋がっていきます。
その他、現在においては、メンタライジングの観点を取り入れたメンタライジング・アプローチも治療法として誕生し、境界パーソナリティ障害だけでなく、愛着の問題やトラウマの治療、子どもとその養育者を対象とした支援など、さまざまな対象者や治療法に通ずるものとして活用されてきています。
自分自身のメンタライジングの機能がどうなっているのか、なかなか自分一人では気づけないこともあります。カウンセリングは、自分のメンタライゼーションのモードを考えたり、どのようにその機能が高まるのかを話し合うことのできる場となります。
ご関心のある方は、当研究所でのカウンセリングのなかでお話してみませんか。

