精神分析

精神分析は、19世紀末に、ウイーンの神経生理学者であるジグムント・フロイト医師により開発された治療技法です。「精神を分析する」、という字面だけをみると、分析家が来られる方のこころを一方的に読み取って、科学的に分析するというイメージが浮かぶかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。フロイトは、人間のこころが意識的なこころと無意識的なこころの両方から成り立っているという考えを基盤にし、その人の無意識にある、生き苦しさのもととなっている空想や考え、感情を扱うことによる治療を考えました。

方法

方法としては、カウチに横になって、頭にうかんでくることをどんなことでも、批判や選択をすることなく、話をしていくという自由連想法を用います。そうして話されることを素材に、これまで意識してこなかった過去の記憶や夢などから、幼児期の体験にまでさかのぼり、無意識のなかに抑圧された葛藤や欲望を発見し、無意識の内容を意識化することによって、神経症症状の解消や解決を目指していました。フロイトは初期の論文(『ヒステリー研究』)にて「ヒステリーのみじめさをありふれた不幸に変えること」という表現を用いて、その人が生きていく中で抱えている悲劇を変化させうる可能性について触れています。現在では、問題となっている症状や行動が即座になくなることを目指すというよりも、自分の内面を深く見つめ直し、変化を生み出すことで、生き生きとした人生を生きることができるようことを目指していて、結果的に症状や行動が解消する場合があります。

精神分析は、特別に専門的な訓練を受け、資格を得た精神分析家により、行われています。日本では36名おり(2019年2月現在、精神分析協会ホームページより)、世界的にみると非常に少ない人数のようです。精神分析では、週に4回から5回というほとんど毎日行われるセッションの中で、他のカウンセリング技法とは異なる濃密な情緒の交流が始まります。そうした非日常的な交流の中で、その人にとって生きづらさの元となっている空想や欲求が徐々に発見されていきます。なお、現在ではフロイトの時代よりも多くの学派があり、多くの精緻化された理論や技法が用いられています。

精神分析的心理療法

なお、日本では、精神分析から派生した精神分析的心理療法が、多く実践されています。週1回、あるいはそれ以上の頻度で、心理療法家とクライアントが対面に座り、あるいは寝椅子に横になって、クライアントが自由連想を行うというものです。これは心理療法をとおして、無意識を意識化し、自分の内側にどんな空想や情緒をもっているのか、それをセラピストとの関係に重ねながら、体験し、理解していくものです。それを通して、困っている症状や悩み事が解消に向かう場合もあります。

概念の一つに「転移」というものがあります。人間は、人生早期より両親あるいは主たる養育者との間で基本的な関係の型を形成します。その型は、その後の人生にも強い影響を及ぼすものであり、意識的には「なぜかいつも同じ人間関係を繰り返してしまい、困ってしまう」「自分としては変えたいのに、同じ結果になってしまう」と感じられるかもしれません。これが「転移」と呼ばれるものであり、精神分析的な治療の中にも現れてきます。その転移が二人の間でじっくりと理解され、徐々に変化していくことになります。

この方法は、自身のこころの探求を通して、自己理解を深め、自分の創造性を高めたいという方、社会生活はある程度、うまくいってはいるけれどもなにか行き詰まりや生き苦しさを感じており、どうしてよいか分からずに困っておられる方などに、お勧めです。また、今の困られている症状や行動とこれまでの生き方が密に結びついている、これまでの生き方を含め整理したいという方にもお勧めです。当研究所では、精神分析的心理療法を受けていただくことが可能です。また、医療機関にかかられている方の場合、主治医に一度、ご相談いただいた上で、受けていただくことになります。