ハラスメント(harassment)

ハラスメント

ハラスメント(harassment)とは、相手を不快にさせたり、傷つけたりするような言動を指します。
昨今では、さまざまなメディアで取り上げられるようになり、身近な人権の問題として認識されるようになってきました。
ハラスメントの中には、相手に暴言を吐いたり、誰かを無視するといった明らかな嫌がらせに加えて、相手を傷つける意図がない言動であったとしても、ハラスメントに該当することもあります。
職場内で起こりやすいハラスメントについてご説明していきます。

パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、職場内での地位や権力などの力関係を背景に、抵抗できない相手に対して、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与え、労働環境を損なわせる言動を指します。
上司から部下に対する言動というイメージも強いですが、同僚や部下であったとしても、相手が抵抗できないような関係性であったり、正社員から派遣社員といった職業形態の違いであったりしても、パワーハラスメントとなる場合があります。
厚生労働省(2021)は、パワーハラスメントを以下の6種類に分けて説明しています。

1,殴る蹴るなどの身体的な攻撃を与える
2,相手を否定したり、必要以上に叱責を繰り返したりするような精神的攻撃を与える
3,仕事から外したり、無視したりして集団から孤立させる
4,達成できないような業務量を要求したり、業務に関係ない作業を強制させる
5,仕事を簡単なものしか与えない、あるいは業務をほとんど与えない
6,職場以外でも継続的に監視したり、勝手に個人情報を漏らす
などがあげられます。

昨今では、パワーハラスメントに関する相談の増加に伴い、2019年に改正労働施策総合促進法(パワハラ防止法)が成立しました。
これにより、事業主は職場内でパワーハラスメントが起こらないよう環境を整え、対策を講じることが義務化されました(中小企業では2022年4月から施行)。

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメントとは、性的な発言や行動によって相手に苦痛を与え、労働環境を損なわせることを指します。
2007年に雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)が改正され、職場のセクシュアルハラスメントを防止する対策や、労働者の相談に適切な対応ができるよう、職場の環境を整えることが事業主の義務となりました。
これらは、男性から女性に対してだけでなく、女性から男性に対するもの、あるいは同性同士に対するものも該当します。
厚生労働省(2021)は以下の2種類に分けて説明しています。

対価型セクシュアルハラスメント
地位や権力などを使い、性的な関係を強要すること、あるいは、その要求を拒否した相手に害を与えることを指します。
例えば、管理者から性的な関係を求められ、要求を拒んだら解雇された。
昇給や昇格を条件に性的な関係を求められたなどが挙げられます。

環境型セクシュアルハラスメント
職場内での性的な言動により  労働者を不快にさせ、職場環境や労働意欲に悪影響を及ぼすことを指します。
例えば、勤務中に性的な話題や冗談を言う人がいて仕事に集中できない、プライベートなことを執ように尋ねられ、職場に行くのが苦痛であるなどが挙げられます。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

マタニティハラスメント

マタニティハラスメントとは、妊娠・出産・育児休業等を理由に、事業主などから嫌がらせや、不利益な取り扱いを受けることを指します。
不利益な取り扱いとは、解雇や降格、減給などが含まれ、こうした扱いを受けることは、仕事の継続やキャリアの向上が妨げられる要因にもなってしまいます。
厚生労働省(2021)は、マタニティハラスメントを以下の2種類に分けて説明しています。

制度等の利用への嫌がらせ型
産休の取得や軽易な業務への転換、育児休業などの制度の利用を申し出たことにより、職場内で嫌がらせを受けた場合のことを指します。
例えば、妊娠し、体に負担がかからないよう業務上の配慮をお願いしたら、役職を外された。
産休・育休の取得を希望したら、上司や同僚などから嫌味や不満を言われたなどが挙げられます。

状態への嫌がらせ型
妊娠・出産したこと、もしくはその状態や症状(つわりなど)に対して、職場内で嫌がらせを受けた場合のことを指します。
例えば、妊娠したことを伝えたら、上司や同僚から「今、休まれたら困る」と言われた。
つわりがひどく、体調が優れないのにも関わらず、「仕事はちゃんとこなして欲しい」と言われたなどが挙げられます。

これらの問題の背景としては、「男性だったら仕事を優先するべき」「女性だったら、家庭を大事にするべき」といった性差別的な考えが、男女平等や多様性が尊重され始めている現代においてもなお、根強く残っているからだと言えます。
女性が社会で活躍しながら妊娠や出産を経験すること、男女ともに子育ての時間を確保することは、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法で守られています。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第十一条の三 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

ハラスメントの相談窓口

ハラスメントは、私たちにとって身近な人権問題です。
状況や場合によっては、ご自身が被害を受けているといことも自覚できないこともあるかもしれません。
不快な思いや、困っていることがあれば、職場内にある相談窓口や労働組合、信頼できる上司に、相談することをお勧めします。
会社や労働組合に相談窓口がない、周りの目が気になる場合には、各都道府県にある総合労働相談センターなど、外部の相談機関を利用することもできます。 
精神的・身体的に不調が出ている場合は、産業医に相談したうえで、当研究所のようなカウンセリングルームで心のケアを行うことをおススメします。
また当研究所では労働基準法など労働に関する法律に強い社会保険労務士を紹介することもできます。
労働環境に対する具体的な対処をしながら、心のケアを行うことが望ましいです。

引用:厚生労働省(2021)職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

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