パーソナリティ障害とは
人それぞれに、考え方や感じ方、行動のパターンの傾向は異なり、それら諸々の特徴によって、その人のパーソナリティ(人格)の特徴が現れてきます。
特徴の違いがあることで、個性やその人らしさが出てくるのですが、考え方や感じ方、人との関わり方が特定のパターンに著しく偏りすぎてしまうと、人間関係でのトラブルや、生活に支障が出てしまうことがあります。
このように、認知、感情、人間関係、衝動のコントロールにおいて著しい偏りがあり、その偏りによって社会的に支障が出ており、なおかつそれらの支障が持続的に出現している場合に、医療機関においてパーソナリティ障害と診断される場合があります。
パーソナリティ障害の原因の1つとして、遺伝要因と環境要因が関係しているといわれています。
環境要因とは、乳幼児期の両親との関係性や家庭環境、あるいは何らかの苦しく辛かった体験などを指し、そうした乳幼児期の体験と元々の遺伝要因が相互的に影響し合って、症状や問題が形成されると考えられています。
パーソナリティ障害の診断
アメリカ精神医学会のDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)では、パーソナリティ障害は大きく3群(A群、B群、C群)に分けられており、その中からさらに細かく分けられ、全10種類にも及びます。
通常は青年期後期から成人期早期(約17歳~20代前半)に現れるとされていますが、それより早い段階から兆候が現れる場合もあります。以下に、各パーソナリティ障害の特徴について説明していきたいと思います。
A群のパーソナリティ障害について
妄想性パーソナリティ障害
他人の言動に悪意があると感じたり、相手を疑ったりしてしまって、親しい間柄の相手さえも信用することができないといった特徴があります。
自分のプライバシーを知られることへの恐れも強いため、他人を必要以上に警戒し、家族であっても信用することができません。そのため、家族を含む人間関係のトラブルを招きやすい傾向があります。
シゾイドパーソナリティ障害
人との関わりを避けて1人でいることを好み、家族も含め親しい関係を求めることが少なく、喜怒哀楽の感情表現にも乏しいといった特徴があります。
他人からの賞賛や批判にも関心がなく、自分のペースで過ごせる環境であれば問題ありませんが、人との関わりが求められる社会的な場面では負担を感じやすく、社会的に孤立しやすい傾向があります。
統合失調型パーソナリティ障害
認知や知覚に歪みがあり、風変わりな言動があるといった特徴があります。
例えば、第6感や霊的な現象など、独特な考えや信念を持っていたりします。発想力がとても豊かであるともいえますが、度が行き過ぎると、現実味のなさが目立ってしまうこともあります。
このパーソナリティ障害の発症には、遺伝要因の影響が大きいといわれています。
B群のパーソナリティ障害について
反社会性パーソナリティ障害
ルールや他人の権利を平気で侵害し、危険な行為であっても構わず行動に移してしまうといった特徴があります。そのため、法律など社会的な規範に適応することができません。
苛立って暴力を振るってしまったり、自分の利益や快楽のために人を騙したりして、社会的なトラブルを引き起こしてしまうことがあります。
境界性パーソナリティ障害
思考が両極端になりやすく、人間関係や感情が不安定で、衝動的な行動が特徴として見られます。
また、相手から見捨てられることへの不安が大きく、相手を理想化したかと思えば、相手の嫌なところが見えると、途端に相手の価値が下がり関係を断ってしまうため、人間関係が安定しません。
感情や衝動のコントロールが難しく、自傷行為などで自分を傷つけたり、相手との関係を自ら壊してしまったりすることがあります。
演技性パーソナリティ障害
外見的な魅力や芝居がかった態度によって、過度に他人の注意を引こうとする行動が特徴としてみられます。
自分が注目の的になっていないと楽しめないため、自分の外見や性的に相手を誘惑し、他人と交流しようとします。また注目を集めるために嘘をつき、同情を得ようとすることもあります。
外見に重きを置きすぎてしまい、中身が伴わず、他人との関わりも希薄なものになりやすいところがあります。
自己愛性パーソナリティ障害
他人への共感性に乏しく、自分は特別であるという誇大な感覚や他人から称賛されたいという強い欲求を抱いているところが特徴としてあります。
自分に対して過剰な自信を持ち、周囲から称賛されることを望み、そのために他人を利用することもあります。
批判されることには激しい怒りを露わにし、周囲と衝突してしまうことがあります。
C群のパーソナリティ障害について
回避性パーソナリティ障害
他人からの批判や拒絶を恐れるあまりに、周囲との関わりや社会的な活動を避けることを特徴としています。
自分に自信がなく、他人よりも劣っているという感覚が強いところがあります。そのため、失敗を恐れすぎて新しい物事に挑戦できないことや、親密な関係の中でも嫌われるのではないかと恐れて遠慮してしまい、なかなか周囲と打ち解けられないことがあります。
依存性パーソナリティ障害
他人に依存し、面倒を見てもらいたいという欲求が強いところがあります。他人からのアドバイスや保証を求め、ほんの些細なことであっても他人に判断を委ねてしまうところがあります。
他人からの支持を失うことを恐れるあまりに、自分の意見を伝えられなかったり、押しの強い人の言いなりになってしまったりすることもあります。
強迫性パーソナリティ障害
完璧主義で、秩序や道理を守ることにこだわるといった特徴があります。
自身の楽しみや人間関係を犠牲にしてまで、自分の目標や課題を達成しようとするため、自分の思う通りでなければ人に物事を任せることができなくなることもあります。
柔軟性が損なわれ、融通がきかないことによって、社会的な活動や人間関係に支障が出てしまうこともあります。
おわりに
これらの分類は、操作的診断基準によって分けられている特徴に過ぎません。
多くが年齢を重ねるごとに減少する傾向がありますが、パーソナリティ障害の種類や経過によって、症状や問題が長期化してしまう場合もあります。
また、複数の特徴を合わせ持っていることがほとんどで、置かれている状況によっても、表に現れてくる特徴が異なってくることもあります。