社交不安障害/社交不安症(SAD:Social Anxiety Disorder)

社交不安障害/社交不安症(SAD:Social Anxiety Disorder)とは、
他の人に注目されることや人前で恥ずかしい思いをすることに強い不安や恐怖を感じ、
そうした状況を回避したり、強い不安や苦痛を感じながら耐え忍んだりしてしまう疾患です。

一般的には「対人恐怖」と呼ばれることも多く、米国精神医学会より発刊され、
国際的な精神疾患の診断基準が示されている
DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual ofMental Disorders Fifth Edition)に,
社交不安障害/社交不安症の基準が詳細に記載されています。
なお、醜形恐怖や自己臭恐怖、妄想を伴うような身体不安は診断基準が異なるものになります。

この疾患で感じられる不安や恐怖の強さは一般的なものと比べて非常に強く、
そのため仕事や学業など、日常生活全般で機能障害が生じます。
たとえば、
「あまりよく知らない人たちと話し合うのに強い不安を感じる」
「人前で電話をかけることが難しい」
「会議などの人の集まりの場で、他の人の注目を浴びる場面が恐い」
などのようなことが生じます。

また「公衆トイレで用を足しにくい」
「店に品物を返品しにくい」
「試験会場で試験を受けるのが恐い」など、
一見、ささやかに思われるような場面で感じる恐怖や不安もここに含まれてきます。
また、不安に伴う身体症状としては、
顔が赤くなる、発汗、動悸、胃腸の不快感、手先の振るえる、下痢、声の震えなどがあり、
激しいものではパニック発作が起きてしまう場合もあります。
頭では、そうした症状が不合理だと分かっていても自分では止めることができず、
強い苦痛や劣等感も生じてきます。


社交不安障害/社交不安症 の原因


社交不安障害/社交不安症 の原因は現在のところ、明らかになっていません。
脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスの崩れによるという仮説や、
恐怖や不安に関与する脳の扁桃体という部位が過剰に反応するという仮説などがあります。
思春期に症状が発現することが多く、男女の性差はないといわれています。


社交不安障害/社交不安症 の評価尺度


社交不安障害/社交不安症 の臨床症状を評価する尺度には、
リーボヴィッツ社交不安尺度 (LlebowitzSocial Anxiety Scale:LSAS-J)や、
社会不安/対人恐怖評価尺度(SocialAnxiety/Taijin-kyofu Scale:SATS)があり、
症状の細部やその重症度をそれぞれ数値化してみていくことを可能にします。


社交不安障害/社交不安症 の治療方法

治療方法としては、第一選択として、
薬物療法や認知行動療法を主とする心理療法の有効性が多くの研究で示されています。
薬物療法ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に用いられることが多く、
その薬には脳の中のセロトニンという物質の減少を抑えることで感情を安定させる働きがあります。
そして、他に緊張を和らげる抗不安薬や、動悸を抑える薬が使われる場合もあります。

また、精神療法を併用することで、不安や恐怖にとらわれる思考パターンを変化させ、
コントロールすることができます。
または、緊張感を和らげ、回避行動を軽減することで日常生活をより送りやすくしていくこともできます。

実際には、
社交不安障害/社交不安症 の症状により著しく社会生活に支障をきたしている方でも
「内気な性格の問題」「病院に行っても性格のせいだし仕方がない」
との思い込みを持っておられる方が少なくありません。
もし身近な方で悩んでおられる方がいらっしゃる場合には、
早めに医療機関を受診する、あるいは相談機関を利用することをお勧めします。