自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder, 略称:ASD)とは
2014年に発売されたDSM-Ⅴで用いられるようになった診断名です。
それまでは、アスペルガー症候群や、広汎性発達障害(PDD)、カナータイプ、小児期崩壊性障害、自閉症と細かな分類がなされていましたが、それらの状態が連続体(スペクトラム)であるとされ、一つの名前になりました。
ICD-10は既存の診断名のため、医師によって診断名が異なる場合があります。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は、「社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害」と「限定された反復する様式の行動、興味、活動」の2つが中核症状とし、周辺症状として、感覚の特異性、てんかん、知的障害、多動と不注意、不眠等々があります。
自閉症スペクトラム障害の3つの型
コミュニケーションの障害に関して、イギリスの精神科医であるローナ・ウィングは、自閉症スペクトラム障害を3つの型に分けました。
①孤立型、②受動型、③積極奇異型です。
これは、診断名にはなりませんが、この型を理解することで、かかわり方や支援の方法がわかりやすくなります。
①は、周囲への関心が低く、反応が乏しいタイプで、一人で過ごすことを好みます。
②は、対人関係に対して消極的ですが、人から話しかけられたり誘われたりすると応じることができます。
③は、対人関係に対して積極的ですが、相手の状況や雰囲気などを気にせず
話しかけたり、一方的に自分が話したいことを話します。
「自閉」という言葉から①が連想されがちですが、②や③もコミュニケーションの障害です。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の原因
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の原因は、まだ明らかになっていませんが、生まれつきの脳機能の障害であることは明らかになっています。
そして、親の育て方やしつけによるものであるという仮説は完全に否定されています。
そのため、早い場合には1歳の頃から視線が合わない、表情が乏しい、名前を呼んでも振り向かない、人見知りしない、親の後追いをしない、人の言ったことをオウム返しする、ごっこ遊びを好まない、偏食が激しい等の特徴が見られます。
しかし、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は、環境とのマッチングによって特性の出方が
変わるため、成長し、環境が変化した(進学、就職、結婚、出産等)ことにより、特性が目立つようになり、思春期や成人期に診断をされることもあります。
脳機能の障害とは、脳自体に損傷や欠損があるわけではなく、見た目は変わらないものの、その使い方に障害があるということです。
そのため、MRIなど脳の検査を行っても異常は見られません。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の診断
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の診断は、生育歴や現在の環境、困りごとの現れ方、
社会適応度などの聴き取りによって総合的に判断されます。
そのため、養育者が診断の場面に同席することが求められたり、学童期の成績表などの提出が求められたりする場合があります。
近年、簡単な聴き取りのみで診断されてしまうこともありますが、そうした場合は病院を変えられることをお勧めします。
また、誤解されがちですが、「発達検査(新版K式発達検査やWISC、WAISなど)」は発達の凸凹や知能発達を測定するものであり、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害等の発達障害の有無を判断するものではありません。
そのため、数値のみで自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害かどうかを診断しようとする病院もありますが、総合的な判断をしてくれる専門医のいる病院を選択する方が望ましいでしょう。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の治療法
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の治療法としては、完治する方法は現在のところ、見つかっていません。
そのため、自分の特性とどのように付き合っていくかが大事になってきます。
しかし、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の特性は、人によって現れ方が千差万別であるため、「こうしたらいい」と一概にわかるわけではありません。
そのため、まずは発達検査や詳細な生育歴、現在の状況などを専門家と確認し、自分にどのような特性があるのかをしっかりと把握すること、自己理解を深めることが治療の大きな一歩となります。
そのうえで、自分にあった、工夫やスキルを見つけていきましょう。
また、専門家(臨床心理士や臨床発達心理士、作業療法士等)と1対1での面談も有効ですが、SST(ソーシャルスキルトレーニング)と呼ばれる
集団で行うトレーニングで、コミュニケーション方法や一般的な対処方法について学ぶことも有効とされています。