初学者のための『心理検査(発達) 事例検討会』(2020年度)5回目を開催しました!

3月7日に予定していましたが、緊急事態宣言を受け、1週間延期しての実施となりました。
緊急事態宣言が明けたものの、コロナ感染はまだまだ予断を許さない状況のため
入室前の手洗いとアルコール消毒、距離をとっての着座などにご協力をいただきました。

1部では、WISC‐ⅣとWAIS‐Ⅳの事例を検討しました。

WISC-Ⅳは、プロフィールの各数値間にそれほど大きな差があるわけではないものの学校では対応に困っているという事例で、読み書きスクリーニング検査など、発達に関連する複数の検査をバッテリーとして実施していました。他の検査結果から、書字が困難であることが示唆されていながらも、WISC-Ⅳでは処理速度に大きな落ち込みが見られなかったことなどから、どういったことが考えられるかといったことが議論されました。

数値や回答内容などを丁寧に見ていくことで、この児童にとって必要な支援が明らかになっていきました。
そして、数値だけでなく、行動観察とこれまでの経過のなかから「間違えて叱責されることへの恐れが大きい」ということが読み取れました。
この児童の苦手なところが理解されにくいプロフィールであることから、児童がうまくできないことについて「努力不足」といった評価がされやすいのではないか、という意見が多くなされました。
そのため、児童の特徴を家庭と学校に丁寧に伝えることがいかに大切かということが共有されました。

WAIS-Ⅳは、思春期事例でした。
この事例は、小学生の頃にWISC-Ⅳを実施しており、その時のデータが一部わかっていたことから、WAIS‐ⅣとWISC-Ⅳを比較するときに必要な注意点を確認しました。
そのうえで、数値の変化が何を意味しているのかについて議論されました。

2部でもWISC‐ⅣとWAIS‐Ⅳの事例を提示しました。
発達検査の事例検討が最終回ということもあり、事例の概要をお伝えした後、参加者それぞれにまずはプロフィールを読み取ってもらうようにしました。

グラフや回答内容、行動観察など、着目ポイントがわかるようになってきておられ、「ここが気になる」ということをそれぞれおっしゃってくださいました。
また、プロフィールや数値をどこから見ていくのかについても、だいぶ慣れてきた様子でした
細かな読み取りに関しては、まだまだ訓練が必要ですが、こうした着目ポイントをまずはしっかりと押さえることが重要です。

今回は、1部と2部にわけ、1部は参加者から事例提供いただき、2部は当研究所スタッフが事例提供をするという新しい試みをしました。
1部は検査実施者が多いことから、事例の概要についても積極的に質問があがり、プロフィールとの関連性を丁寧に見ていくということがなされたと思います。
また、標準出現率の見方や、数値から言えることの限界、主訴に即した理解の仕方など、細かなところにまで議論が及んだように思います。

2部は検査を実施したことがない方や実施初学者の方が多く、最初はそれぞれの数値の意味を1つ1つ丁寧に説明したり、下位検査について説明したり、時にはスコアリングの方法について説明するなど、基礎から解説をしていました。
また、参加者のニーズに応じて、事例の年齢や、障害の有無などを考慮した事例を提示していました。

1部と2部にわけたことで、参加者の熟練度やニーズによりマッチした事例検討会になったのではないかと思います。
2019年度に開催した事例検討から続けてご参加いただいた方も多くいらっしゃったため、2021年度がコロナ感染予防のため実施できないことが残念に思います。

しかし、また対面での開催が可能となりましたら、再開したいと考えておりますのでその際にはまた多くの方にご参加いただけたらと思っています。

3月28日には人格検査の事例検討の第5回目を開催予定です。
最後までどうぞよろしくお願い申し上げます。


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