P‐Fスタディ(Picture‐Frustration Study)

P‐Fスタディとは

P‐Fスタディ(Picture Frustration Study)は、ソール・ローゼンツァイク(Saul Rosenzweig)によって考案された心理検査であり、「個性力動論」や「フラストレーション理論」など、ローゼンツァイクのパーソナリティの理論をもとに作成されています。
この心理検査では、日常生活の中でよく経験されるような状況のイラストの中に、登場人物のセリフが書かれており、それらのイラストやセリフに対する反応を読み取っていくことで、記入者の欲求不満やストレスに対する反応の仕方や、性格の傾向を把握していきます。
刺激が欲求不満場面に制限されているため、準投影法(半投影法)と呼ばれています。

日本では1955年に児童用が公刊され、次いで1956年には成人用、そして1987年には青年用が公刊されました。
50年以上改訂がなされていなかったため、現代では馴染のない場面も含まれていましたが、児童用(第Ⅲ版)は2006年に、成人用(第Ⅲ版)は2020年10月に改訂がなされました。
これらの改訂により、どの年代でも分かるようにイラストの様式や場面の内容が一部修正されています。
また、それぞれの年齢群のデータを再度収集し、数値の再標準化がなされ、それに加えて、記入しやすいようにB5からA4に用紙のサイズ変更もされました。
当研究所では、改訂された第Ⅲ版を用いて、実施しております。

実施法

P‐Fスタディは自己記入式の準投影法です。
用紙には、日常生活の中で経験するような場面のイラストが数ページにわたり、描かれています。
受検者は、各場面に登場する人物のセリフを読み、同じ場面で登場している人物が、そのセリフに対してどのように返答するか、吹き出しに思いついた内容を記入していきます。
全部で24の場面があり、1番目から順番に記入していきます。
医療機関や私設相談室などでは、一対一での個別法で実施されることが多いですが、機関によっては、集団法という形で、大人数に対して一斉に実施する場合もあります。
読み書きが困難な方に対しては、検査者が代わりにセリフを読み、受検者が口答で答えるといった方法で行なうことも可能です(口答法)。
記入時は、それぞれの場面について、深く考えずに、初めに思い浮かんだ内容を記入していくことが望ましいとされています。
内容の書き間違えや、書き換えたい場合は消しゴムで修正せず、修正したい箇所に線を引いて、訂正します。
所要時間は、個人差がありますが、15分~30分程度ですべての項目を書き終える方が多いでしょう。
すべての場面の記入を終えた後は、記入内容の確認と共有を行なうために、質疑時間を設ける場合があります。
そのため、質疑時間を含めても、30分~40分程度で終えることができるため、取り組みやすい心理検査であるといえます。

適用年齢

P‐Fスタディには、児童用(小学生~中学生)、青年用(中学生~大学生)、成人用(20歳以上)の3種類に分けられており、幅広い年齢層に実施することができます。
児童用の対象年齢は小学生からとなっていますが、口答法を用いれば4歳から実施することができると言われています(※低年齢の場合は、知的能力を踏まえて実施可能かを見極める必要はあります
)。

P‐Fスタディから分かること

記入された内容は、一定の基準や手順に従ってスコアリングを行ない、結果の処理を行ないます。
標準化された基準と処理されたデータとを比較したり、反応内容を丁寧に読み取ったりしながら、その人の性格の傾向や、欲求不満やストレスに対する反応の仕方を把握していくことができます。
また、P-Fスタディの特徴としては、アグレッションの概念を用いて「アグレッションの方向」と「アグレッションの型」を分析する所にあると言えます。

アグレッション(aggression)とは、一般的に“攻撃性”と日本語訳されることが多いですが、ローゼンツァイクは、攻撃や破壊的なネガティブな意味としてではなく、(1)普通の生活状態における一般的な「主張性(Assertiveness)」、(2)そうした行動のもとになる神経のメカニズム、(3)これらの行動を伝達あるいは促進する生理学的条件を含んだもの、と幅広く定義しています。
そして、すべての行動を志向する行動に含まれるものという意味での「主張性」であることを強調しています。

このアグレッションは「方向」と「型」の2つの次元の組み合わせで考えることができる、とされています。
例えば、アグレッションの方向が自分に向きやすいと、自分に原因を求める傾向があるといえ(自責)、アグレッションが相手に向きやすいと、相手に原因を求める傾向があるといえます(他責)。
また、アグレッションを自分にも相手にも向けないといった反応の仕方(無責)もあります。

また、アグレッションの型としては、欲求不満やストレスとなる出来事に囚われ、逡巡したり(障害優位型)、問題を解消するために率直な反応を示したり(自我防衛型)、あるいは建設的な問題解決のために要求したりする(要求固執型)などの種類に分かれます。

その人のアグレッションがどのような特徴を示しているかによって、日常生活の中で生じているフラストレーションをどのように解消しているのかを知ることができ、その人が社会的な場面でどのような振る舞いが多いのか、その場に相応しい行動をしているかどうか、場面の読み違いがどの程度生じてくるのか、などの傾向を把握することができます。

社会生活における対人関係で、なんらかの困り事を抱えておられる場合には、P‐Fスタディを受験いただき、その結果から、上記にあるようなご自身の特徴や傾向を理解していくことができます。
そして、どうしてその困り事が生じているのかについて理解を深めたり、今後、どのような行動や対処ができるようになれば、より過ごしやすくなるのかについてフィードバックの中で、考える手がかりにすることができます。

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