精神科臨床におけるテスト・バッテリー~その基本的な姿勢と考え方~を開催しました!

本日は、臨床心理士・公認心理師の豊田佳子(共和病院/桜クリニック)先生をお招きして精神科臨床におけるテスト・バッテリーについてご講義いただきました。
テスト・バッテリーはこれまでの研修後アンケートの中で最もご意見が多く、実施したいと思いながらも、オンラインでどこまで実施できるのかと模索し、豊田先生と何度も話し合って実現しました。
午前中は「テスト・バッテリーとは何か」について2時間お話いただきました。

最初にテスト・バッテリーについて話すためには「心理アセスメント」が何かを押さえておかなければいけないと、心理アセスメントについて、その手段、定義、過程を1つ1つ丁寧に、実際の臨床場面でのご経験をもとにお話しされました。

そして心理アセスメントをするための手順、方法についてもお話いただき、その中に心理検査が含まれることをご説明されました。
医療機関における心理アセスメントを行う上で、豊田先生が大切にされていたのは主治医との連携でした。
主治医から心理検査のオーダーが入った時、ただ言われた通りに実施するのではなく、主治医は何を知りたいと思ってオーダーしたのかをきちんと確認し、それに応えるためにどうすればいいかを検討し、時には主治医と話しあうことが必要で、また主治医からのオーダー通りではなく、心理士自身も何を知りたいと思うのかを考え、クライエントが望むことと合わせて、テスト・バッテリーを組んでいくことが重要だということです。
主治医のオーダーに対して心理士が能動的に動くことについては、午後の事例の中でも繰り返しお話されていました。

また、心理アセスメントを導入したり、心理検査を実施したりする際の具体的なセリフも教えていただき、実演をされました。
最後に、豊田先生がよくつかわれる心理検査の概要を簡単にご説明いただきました。

1時間のお昼休憩をはさんだ後、質疑応答の時間を設け、その後、当研究所スタッフが架空事例を用いて、豊田先生に心理アセスメントについて公開SVを受ける形式を行いました。
架空事例は、転職を繰り返し、対人関係について悩む男性で、検査実施前の10分間にどのようなやりとりを行い、何を見立て、どのようにテスト・バッテリーを組んでいくか、カウンセラーの思考過程も語りながら、逐語を提示しました。
それに対して豊田先生から、カルテを読んだ時点で見立てられることをお話いただき、さらに面接の中で重点的に聴き取りたいと思う箇所についてお話しいただきました。

受動的なクライエントに対して、描画をテスト・バッテリーに含むことで、能動性をどこまで発揮することができるか、自身で組み立てを行うことがどれくらいできるかを見ることができる
という視点は目から鱗でした。
描画は「描いているものをどのように解釈するか」に意識がいきがちですが、検査そのものがどのような性質を持っているか、その性質を用いて何を見るかも重要であることに気づかされました。
これは描画に限らず、知能検査や質問紙など全ての検査にも言えることです。

次に、豊田さんの事例について聞かせていただきました。
入院治療をすることになった高校生の事例で、主治医や看護師からの情報の聞き取りからクライエントとの実際のやり取りについてお話していただき、検査を実施し、検査の様子からさらに見立てを精緻化していく過程を明らかにしていただきました。
多職種からの聞き取りについては、常勤か非常勤かで実施のしやすさが異なるということもご指摘いただきました。

実施する心理検査の数、心理検査を中止するとき、所見の返し方など、後半はテスト・バッテリーだけではなく、心理検査やアセスメント全体に関するご質問にお答えいただきました。

実施後にアンケートを実施した。
当研究所で行う研修は臨床歴5年未満の方のご参加が圧倒的に多いのですが、今回の研修は、10年以上の方が最も多かったというのが印象的でした。
また、研修についての感想をたくさん書いてくださる方が多く、医療機関だけでなく様々な機関でみなさまが工夫しながらアセスメントを実施しておられる様子がうかがえました。
さらに、「明日からの臨床を見直したい」「主治医ともっとコミュニケーションをとる」など、前向きなご意見が多く、読んでいるこちらも気合がはいりました。

心理検査はオンラインでできる範囲が非常に限られてしまいますが、そのなかでできることを検討していきたいと思います。


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