カウンセラーと精神科医の違い

心がしんどくなり、勇気をだして精神科、心療内科を受診しても「あまり話を聞いてもらえなかった」「薬の話ししかしなかった」といった不満を感じられた方の声をお聴きすることがあります。

そこで、ここでは、精神科・心療内科について詳しく説明をさせていただきたいと思います。

 

精神科と心療内科

 まず精神科と心療内科の違いについて説明します。精神科が対象とするのは「心の病気」です。心の病気は、原因を特定することが困難なものも多いため、症状によって診断します。心の病気の症状として現れやすいのが、知覚や記憶、思考、感情、気分、自我意識(自分が自分であるという認識)などにおける異常です。心の病気として主なものは、うつ病、統合失調症、パニック障害(症)、強迫性障害(症)などです。そして、これらを診察し、治療する専門医が精神科医です。精神科医でなければ出せないお薬もあります。

 一方、心療内科が対象とするのは「心身症」です。心身症というのは、ストレスや心理的影響による身体症状のことです。具体的には、ストレス性胃潰瘍、気管支喘息、自律神経失調症など で、ストレスによって体調に不調をきたいしている状態を指します。これらを診察し、治療する専門医は内科医か精神科医になります。

 しかし、日本では「精神科」という言葉に、まだまだ抵抗感が強い方も多いため、精神科医が「精神科」と標榜せずに「心療内科」とされていることも少なくありません。そのため、精神科か心療内科どちらに行くか難しく考えずに、家から近い、評判が良いなど行きやすい所を受診されることをおススメします。もし、受診された所以外の方が望ましいと医師が判断した場合(精神科医にしか処方できない薬が必要等)には、他の医療機関を紹介してくれるでしょう。

 

病院とクリニック

次に、病院とクリニックについて説明します。「病院」は、入院ベッドが20床以上ある医療機関を指します。そのため入院医療が主体となります。また救急医療や専門医療、高度医療などを専門とする大病院から、診療所のような機能を持つ小さな病院まで、様々な形態があります。基本的には、難しい検査や治療を実施する場合や、入院治療が必要な場合に行くところとなります。

一方、「クリニック」は入院設備がない、または入院ベッドが19床以下の医療機関を指します。そのため、患者が通う外来医療が中心となります。軽い病気の場合や、病院での入院治療や専門治療が必要な病気かを判断する場合に行くところになります。クリニックは、診療所、医院といった名前で表記されることもあります。

初めて精神科を受診する場合は、「クリニック」を受診されることをおススメします。病院の中には、紹介状がないと診てもらえないこともあります。クリニックを受診した際に、病院を紹介された場合には、紹介状を持って病院に行きましょう。

 

精神科医療機関にいる専門職

 精神科医療機関に必ずいる専門職は精神科医です。精神科医は、医師免許を所持しています。この医師にしかできない仕事は、診断や診断書の作成、薬の処方、身体検査や心理テストのオーダーです。つまり、精神科医は、診察をして症状から病名を判断し、治療のために薬を用いることが主な仕事となります。極稀に、診察とは別枠で特別にカウンセリングを行われる精神科医もいますが、その詳細は後述します。

 そして、精神科医以外の専門職は、いる場合といない場合があります。精神科に精神科医以外を雇わなければいけないという法律はありません。また多くの医療機関には、受付の方がおられ、保険証のやりとりやお会計をしてくれます。受付の方々は、保険証や医療費について勉強されていますが、精神疾患や精神障害について勉強されている方は少ないです。そのため、精神科医療の専門職とは異なります。

 さて、精神科医以外の精神科医療の専門職として勤務している可能性があるのは、臨床心理士公認心理師の資格を持ったカウンセラーです。このカウンセラーは「心の専門家」と呼ばれ、カウンセリングや心理テストを実施します。カウンセラーが行うカウンセリングは、1回30分~50分であることが多く、1週間に1回や、2週間に1回など、患者の症状に合わせて、定期的にお会いします。カウンセリングを受けたい場合には、主治医にカウンセラーを受けたい旨を伝え、許可してもらう必要があります。

 そして、もう一人、精神科医療の専門職として勤務している可能性があるのは、精神保健福祉士(PSW)の資格をもったソーシャルワーカーです。ソーシャルワーカーは「福祉の専門家」と呼ばれ、障害者手帳や障害者年金、就労移行支援などの社会資源を紹介したり、仕事や生活の困りごとの相談にのってくれたりします。ソーシャルワーカーとの面接も、1回30分~50分であることが多く、医療機関によっては、ソーシャルワーカーが家庭訪問をして相談に乗ってくれたり、会社や行政機関、福祉機関などと連絡をとったり、同行してくれたりすることもあります。

 さらに、看護師が勤務している精神科医療機関もあります。精神症状の背景に身体疾患が潜んでいることもあれば、服薬による副作用で身体症状が出現することもあります。そのため、看護師が血液検査のための採血を行ったり、バイタルチェックなどを実施します。看護師が患者の話を聞くこともありますが、それはカウンセリングではなく、コミュニケーションの一環として話をしていることになります。

 先に記載したように、これらの専門職がいるかいないかは、医療機関によって異なります。全ての専門職(他にも作業療法士や管理栄養士がいるところも)がそろっている医療機関もあれば、精神科医と受付のみの医療機関もあります。カウンセラーを雇っているところもあれば、ワーカーを雇っているところもあります。どういった専門職がいるかは、HPや医療機関に直接問い合わせて頂き、ご確認下さい。

 

精神科医はカウンセリングをしない

 先に精神科医療にいる専門職について説明をしましたが、それぞれの資格により、役割が異なることがおわかりいただけたかと思います。

 そして、精神科医は、診断と処方が主な役割となるため、カウンセリングは行いません。精神科医は、患者と話すことで、診断が間違っていないか、薬が合っているかどうかを判断します。そのため、薬を飲んでみてどうか、調子はどうか、症状はでていないか、といった質問が主となります。また、精神科医が診断や薬の処方のために患者と話すことを「診察」と言い、この診察は精神科医以外が行うことはできません。

初回は診断や薬の処方のために、30分~60分と長い時間をかけて話を聴く場合が多いですが、2回目以降は、3~10分程度の診察で終わることが一般的です。初回診察の場合、完全予約制になっていたり、予約できる曜日や時間に制限が設けられている精神科が多いのも、こうした理由です。患者にしてみれば「今すぐ受診したい」という思いもあるでしょうが、初回を丁寧に診ていただける精神科は信頼できるともいえます。そのため、症状が悪化してから受診するのではなく、早めに受診予約するよう心がけて下さい。

また初回に、精神科医が長く話を聞くのではなく、ケースワーカーやカウンセラーが精神科医の代わりに話を聞くこともあります。その場合は、カウンセリングではなく、あくまで「精神科医の代わり」ですので、診断に関わるような症状についてお話をお聞きすることが主であり、その場でアドバイスをしたり方針を提案することは少ないはずです。ここでお聴きした内容はカルテなどにまとめられ、精神科医に情報が伝えられ、診察の中で治療方針などが提案されます。

よく驚かれることですが、多くの精神科医は、カウンセリングを行うことはできません。精神科医は心理学について学ぶ機会が少なく、カウンセリング技法や心理テストについては、ほとんど知らないといってもいいでしょう。ごく稀に、精神科医の中に、臨床心理士や公認心理師の資格を取得されたり、カウンセリングや心理テストについて深く学ばれている方がおられます。その場合、特別に精神科医がカウンセラーの役割を担う場合があり、診察とは別の時間帯や枠組みの中で行われます。そうした時には、必ずクライエント(患者)と方針について説明があるはずですので、そうした説明がなければ診察だと思って間違いないと思います。

精神科を受診され、「話を聞いてもらえない」と感じた場合には、話をした相手が何の専門職であるかを確認しましょう。ネームプレートに記載されていることが多いですし、直接聞かれても失礼ではありません。また、カウンセラーやケースワーカーがいる医療機関を受診されたいと思った場合には、HPで確認されるか、医療機関にお電話されて確認されることをおススメします。

短い時間で近況や症状を伝えることが苦手な方は、事前に紙や携帯に伝えたい内容をメモしておくことをおススメします。診察でそのメモを読み上げても良いですし、精神科医に渡し、読んでいただいても大丈夫です。

 

医師が行う治療と心理カウンセリングの違い

 精神科医も含め、医師が行うことのできる治療は、大きく分けて入院治療と外来治療の2つです。外来治療とは、定期的に通院してもらうことで、症状の経過を確認し、症状に合わせた薬を処方します。丁寧な精神科医は、悩みや不安について少し時間を割いて話を聞いてくれることもあります。その場合は、話を聞くことで不安を和らげたり、現実的なアドバイスや対処方法を教えてくれたりします。基本的には症状を軽減するための会話であり、現実生活を上手くやっていくための助言を行います。そして、症状や生活状況によって入院治療を提案したり、訪問看護を提案したり等、治療に必要な指示を出します。

 一方、カウンセラーが行う心理カウンセリングは、クライエント(患者)の希望に合わせて、どのようなカウンセリングを行うのが良いかを提案し、クライエント同意のもと実施します。例えば、ネガティブな思考を変えたい、忘れ物を少なくしたい、自分の過去について整理したいといった内容は薬だけでは治癒が難しいです。また、単に話を聞いてもらったり、助言をもらったりしてもなかなか上手くいかない場合も多いです。そうした時に、思考やその背景にある価値観を変えていくようなカウンセリングを行ったり、忘れ物をしないための環境調整や行動調整について話し合うカウンセリングを行ったり、過去の自分と向かい合い、内省を進めていくカウンセリングを行ったりします。これらは、1回で終わることは少なく、毎週~月1回程度の頻度で複数回受けて頂くことが多いです。薬物療法よりも、「治したい」「変化したい」という気持ちがさらに必要となります。

 

医療機関と当研究所でのカウンセリングの違い

 医療機関のカウンセラーと当研究所のカウンセラーができることや、資格などに違いはないことが多いです。しかし、医療機関に勤務するカウンセラーの場合は、精神科医からのオーダーによってカウンセリングや心理テストを実施することができます。そのため、カウンセリングの頻度や回数、技法が精神科医のオーダーで決まってしまうこともあります。また、基本的に医療機関が開院している時間内でのカウンセリングとなるため、夜間や日祝は実施されていないことが多いです。さらに、カウンセラーを雇っていない精神科の場合、薬の処方が必要ではない方は、患者の困り感が残っていた場合でも診察を継続しないこともあります。また医療機関によっては、心理テストの結果を医師がフィードバックしたり、検査所見のみを渡されるということもあり、十分な説明を受けられないということもあります。

 一方で、当研究所は医療機関ではなく、私設オフィスといわれるカウンセリングルームとなります。そのため、夜間や日祝もカウンセリングや心理テストを受けることができます。また薬を用いずに、言葉でのやりとりを通して、困り感の解消を目指します。しかし、医療機関ではないため、保険証を使うことができません。そのため、医療機関で受けるよりも高額になってしまうことが多いです。また医療機関ではキャンセル料が発生しない所もありますが、当研究所のようなカウンセリングルームではキャンセル料が発生することが基本となります。

 

当研究所では診断や薬の処方はできない

 当研究所には、スタッフが3名いますが、医師免許を所持している者はおりません。そのため、診断名をつけたり、薬を処方することはできません。私たちスタッフができるのは、カウンセリング心理テストです。また、精神保健福祉士・社会福祉士を所持しているスタッフ1名は社会資源の紹介を行うことができます。

 心理テストを実施しても、特定の疾患を特定することはできません。あくまで「傾向」をお伝えすることしかできません。しかし、カウンセラーが直接テスト結果をフィードバックさせていただきますので、数値だけのお伝えでなく、数値から何が言えるのかを丁寧に説明させていただき、クライエントの困り感や今後について話し合いながら必要な情報を丁寧にお伝えさせていただくことができます。

診断や薬の処方をご希望される場合や当研究所スタッフが必要だと判断した場合には、医療機関をご紹介させていただきます。現在、精神科医療にかかっていらっしゃる場合は、主治医に当研究所を利用することをご相談下さい。