新年度が始まる前に心理検査を学ぼう2019〜2020を開催しました!

今日は5回シリーズの最終回、公開スーパービジョンを行いました。
スーパーバイザーには京阪病院の岸本和子先生をお迎え。

第一部と第二部の実施・スコアリング研修の事例は、当研究所の浜内がWAIS-Ⅳを出しました。
これまでは、検査の記録用紙のみを出していたのですが
皆様の勉強になれば・・と今回は思い切って所見も出して、見ていただくことにしました。

今回の事例は、数値的には全て平均値。
有意差は出るものの、標準出現率は20%以上のものがほとんど。
有意差よりも、標準出現率の大切さを教えていただきました。
またその数値によって、「差がある」「大きな差がある」「非常に大きな差がある」
など所見に書く言葉のチョイスが変わるなど、細かなご指摘もいただくことができました。

数値に差がない結果は、所見としては書きにくい・・・。
その分、各検査項目への回答方法や、行動観察をしっかりと見ていくことが大切です。
誤答をしているところでは、
「どういう思考、認知でこういう回答になったのだろう?」
「どうしてここで誤答したのだろう?」
と思いを巡らせ、仮説を立てます。
そうした作業を繰り返していくうちに、同じような仮説が何度も出てくると、それは仮説としては有力になり「見立て」となります。

検査結果の書き方では
検査結果の数値からいえるもの⇒「です」「でした」など言い切りの表現
数値や行動観察から見立てられるもの⇒「示唆されます」「いえます」など含みを持たせた表現
検査者の考察に近いもの⇒「かもしれません」「こともあるでしょう」など幅を持たせた表現
というように、それは事実なのか、見立てなのか、考察なのかを分かる文章にすることが大事だということも教えていただきました。

教育現場や福祉現場などでは、ウェクスラー式知能検査の結果のみを見る専門職も多いと思います。
そうした時に、所見から「ここは数値から書いているな」「ここは検査者の見立てだな」などがわかる文章が良い所見ではないでしょうか。
そうでなければ客観的事実かどうかがあやふやになってしまいます。
また所見を読んで、クライエントの検査時の様子が浮かび上がってくるような所見も素敵な所見ですね。

第一部の解釈研修では、参加者の方から事例提供いただきました。
事例提供者は、事例提供もスーパービジョンも初めての体験とのこと。
事例をまとめることなどにもご苦労があったようです。

事例も、「描画テスト」ではなく「クライエントとの関係性の中で描画を行った」というものだったため
「検査として用いる描画」と「描いてもらったもの」とでは解釈が異なることを教えていただきました。

さらに、今回の事例では知的障害がある方だったため、
象徴解釈の前に、絵から発達の理解を行うことが優先されることについて中心的に学びました。
「幹がこう描かれているから、自我の強さが・・」
と解釈するよりも前に
「〇歳だったら、幹はこのように描かれやすい。」
と発達段階に即して解釈をすることの必要です。

また、「実は目的を表している」というような1対1対応の解釈は非常に危険であり
あくまでクライエントの現状や、成育歴、発達段階、現状などを踏まえたうえで
「その実は何を表しているのか」を考えることが必要となります。

描画テストでは象徴解釈に注目が行きがちですが、発達の解釈を行うことの重要性を学ばせていただきました。
事例提供をすることは非常に勇気がいることです。
浜内も、所見を出すことには非常に抵抗がありました。
しかし、実際に見ていただくことで、学ぶことは多く、事例提供者からも「出して良かった」とおっしゃっていただけました。

当研究所は少人数制ですし、初学者の方も多いため、発表しやすい空気があるのではないかと思います。
それでも勇気がいることであることは確かです。
事例提供して下さった方には、どのような場合でも敬意を表したいです。
今後も、事例提供者を募る機会がありますので、ぜひ皆様、ご応募下さい。

第二部の解釈研修では、スタッフから事例を提示させていただき、
主にバウムテストとPFスタディのローデータから
クライエントのイメージをふくらませていきました。

事例の概要を把握する際にも、単に情報を整理するというだけではなく、
「そのクライエントならどんな検査結果になるだろう」と、
正解・不正解関係なく予め想像して聞くことが重要であることを教えていただきました。
その上で「あれ、こうなるはずなのになってない」と疑問が湧いてきたりすることで、
見立てるという姿勢が育まれていきます。

PFスタディでは、記録用紙のデータではあまり目立った特徴は見られませんでしたが、
前半と後半の変化の具合からクライエントの心の動きを推測できることや、
後のバウムテストと組み合わせることでGCRの意味合いが変わってきたりなど、
たくさんの発見がありました。

バウムテストでは、全体から形式、内容分析と順に進んでいく中で、
最初はできる限り「こんな人ではないか」と大いに推測をした上で、
他の検査結果と比較しながら、所見を書く際にはその推測の中から厳選して記述していくことを学びました。

岸本先生が検査結果から豊かに想像し、読み解いていかれる中で、
より立体的にイメージする過程を参加者の皆様とともに味わうことができました。

参加者の皆様からは、
「こんな機会はなかったので、とても貴重だった。もっと勉強しなければ!と思った」
「一つの結果からこんなに読み取ることができるのに驚いた」
といった感想を言っていただきました。

5回に渡って『新年度が始まる前に心理検査を学ぼう2019〜2020』を開催しましたが、
まさに締めくくりにふさわしい回となりました。

次は『現場で生きる心理検査を学ぼう2020』と題しまして、
認知機能検査なども加え、さらに学びが得られる勉強会も企画しております。
ぜひご検討ください!

『現場で生きる心理検査を学ぼう2020』詳細はこちら