2021年度 ZOOMで行う 初心者精神分析勉強会(第3回)を開催しました

2021年8月1日(日)10:00~12:00に、ZOOMで行う 初心者精神分析勉強会の第3回を開催しました。
今回の講読範囲は、『現代精神分析基礎講座 第4巻 精神分析学派の紹介2』の第10講 短期力動療法でした。助言者には、フェルマータメンタルクリニック院長の細澤仁先生をお招きしています。

今回の範囲では、精神分析の中で短期力動療法がどのように発展してきたのかという歴史を概観しつつ、現在、精神分析の世界ではどのように実施されているのか、従来の長期に及ぶ精神分析プロセスとの違いについて書かれていました。

ディスカッションでは、参加者の先生方が勤務されている教育現場や養護施設などの臨床現場のお話をお聞きでき、クライアントが当該機関に通うことのできる年数が限られているとか、週に1回の頻度では会えないなど、積極的に短期間のセラピーを導入しているというよりは、 セラピーの場の構造上、短期間にせざるを得ないという現状があるようでした。その中で、どのように上記の短期力動療法の理論や概念を活用できるかという話の中で、クライアント側にかなり明確な問題意識がなければ短期力動療法の導入は難しいのではないかということも話題に上がりました。

助言者の先生からは、1960年代に短期心理療法の研究をしていたBalint,M.のFocal psychotherapyの話題が提供されました。それはBalint,M.が,数か月に10分程度しか患者に会えない英国家庭医を対象にし、セラピーの導入時に患者との間で話し合うテーマを焦点化し、1~2年してから最初に焦点化したテーマを再確認するという作業をしたところ、概ねどのケースも、初期の焦点化が適切ではなかったという結論に至ったというものでした。その後、初期にテーマを焦点化するよりは、患者からある重要なテーマが出されたタイミングで、医師(セラピスト)がそれを理解する(同調する)と、その瞬間にフラッシュという濃密な接触が起こるとし、そのフラッシュこそが重要であるとしました(「フラッシュ技法」)。
つまり、現実的には、短期間ではテーマを焦点化し、共有して精神療法ができないという状況下で、セラピーがクライアントのパーソナリティの全容に変化を及ぼすことは難しく、それよりは、セラピストはクライアントとの信頼関係の構築を大事にしながら、会える範囲でお会いし、フラッシュのような濃密な接触が起こる瞬間に備えておくことが大事ではないかというお話でした。
そのために、個人セラピーをセラピストが受けるという体験が重要とされていますが、日本の現状を考えると、まずは個人スーパーヴィジョンや事例検討を受けることによりクライアント理解を深めることからではないかという話にもなりました。
私たちが臨床現場で、週に1回50分という構造をもつことの難しいなかで、クライアントとの関係性をどのように大事にしながらセラピーを進めるかを改めて考える時間になったように感じました。

本勉強会をもって、本年度の初心者精神分析勉強会は終了となります。
今年度は、助言者の先生もお招きしての会だったということもあり、連想の深まる豊かな会になったと感じております。

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