2021年度 初学者精神分析勉強会 第2回を開催しました。

2021年6月6日10時~12時に、2021年度 初学者精神分析勉強会 第2回をZOOM上で開催しました。
今回の講読範囲は「第9章 集団療法について 精神分析的な指向性を持った集団マネージメント」でした。講師には、京都大学大学院の岡野憲一郎先生をお招きしています。

本章では、フロイトとビオンの集団理解についての理論の概要に始まり、ビオンの集団理論やその後の対象関係集団精神療法について、さらにいくつかの集団精神療法の事例が述べられていました。

ディスカッションでは、そもそもビオンの基底想定集団や作業集団というものが具体的にイメージしにくいという話に始まりました。negative capabilityという概念に示されるように、人間は曖昧なものに耐える力が限られており、構造のない状況でグループをすると原始的で生々しい、動物的なやりとりが生まれ始め、集団がある目的に目指して、各自が作業を進めることが難しくなっていくというようなイメージが共有されました。
たとえば、病棟で患者やスタッフが集まって、医師も看護師も患者も関係なく自由に話し合うようなグループが始まると、精神分析のセッションのようにグループの不安が高まり、集団から不安が現れてきて、集団精神療法ではそれを分析家(あるいはグループの指揮者)が解釈することになるということでした。
現在では、集団精神療法を実施する臨床家が少なくなっており、参加者の先生方もなかなかイメージしにくかったですが、それよりは勤務する職場での集団力動をイメージしながら、ディスカッションが進みました。

医療や教育、福祉など、心理士の働くさまざまな職場でも、「依存」や「闘争‐逃避」などビオンの基底想定集団を思わせるような動きが現れ、しかし現実の状況としては責任者や権限がある中で、なかなか集団に働きかけて実情を変えることは難しいという話になりました。
一つの可能性として、ミーティングの場を設定し、その中で自分たちの集団について話し合い、考えることはできるのではないかという意見も出ました。

また、集団の中でリーダーとサブリーダーのペアに、集団の他のメンバーが付き従う形になる「つがい集団」についても、その二人の関係性が良い時には集団はうまくいくが、関係が破綻すると他のメンバーが不安になるということはあるのではないかという意見もでました。

今回は、それぞれが勤務する職場での集団を理論を通して見つめ直すという意味で、興味深い章となったように思います。

次回は、8月1日(日)10時~12時を予定しています。内容は「第10章 短期力動療法」であり、講師にはフェルマータメンタルクリニックの細澤仁先生にお越しいただく予定です。
ご興味やご関心がおありの方はこちらよりお申し込みください。

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